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人はそれぞれの形で優しい - ヱヴァQ ネタバレ全開感想

ここからはヱヴァQのネタバレ全開感想あるいは妄想です。引き返すならいま。
















Qの感想としてまず挙がるのは、人気(ひとけ)のなさ。
破までは生活の息吹がありました。都市に生きる人々、学校、使徒防衛における総力戦。
ところが、Qの風景は the day after であり、中盤でシンジ君が目にするのは廃墟となったネルフ本部と、破滅した地上の風景。
すべてが終わったあとの風景は静かで美しい。エヴァはビジュアルインパクトの塊だけど、それはこのQでも色褪せてません。ネルフ本部は廃墟というより巨大な墓標で、世界が半壊したにもかかわらず14年のあいだ墓守をしていたゲンドウと冬月先生、そしてネルフとの闘いを継続するヴィーレという構図にやるせなさのようなものを感じます。
やるせなさといえば、エンディングに流れる曲「桜流し」の雰囲気も圧倒的です。音楽の持つ力を再認識させられます。

破のラストで旧劇言うところの「S2機関取り込み」が起こったらしく、ネルフが配備している使徒ライクな兵器、新型エヴァ、2号機のビーストモード、それらには最強使徒ゼルエルが持っていた「硬軟自在・容積無視の包帯」「巨神兵ライクな破壊光線」なんかが備わってました。
文明が潰えた荒野でいまなお、生き残りがそれぞれの望みを通すため、世界を破滅させたテクノロジーを操って黙示録的なバトルを展開する。Qには前二作にはなかったSF的な寂寥感があります。

登場人物については…ミサトとアスカかなー、やっぱり。
シンジ君からしたら、起きてみれば14年経過、周りの人はなんか微妙な態度、ミサトさんには突き放され、レイは救出できていないと散々ですが、中盤でシンジ君がカヲル君から洗脳くらってる場面を見たあとは、逆にミサトさん達のことを考えてしまった。

カヲル君はシンジ君を「君は罪なんだよ」という。だけどちょっと待ってほしい、彼は確かに破のラストでサードインパクトのきっかけを作ったかもしれないけど、そのあとに本物のサードインパクトを起こしたのはネルフとゼーレですよね? というか最初から起こす気でしたよね奴ら。
爆心地の惨状を見る限り、旧劇と同じようにレイかあるいはレイに連なる何かを媒体としてサードインパクトを起こし、最終的には槍二本差し込まれて中断されたっぽい。
元ネルフ職員の立場からすれば、「ネルフの目的はサードインパクト防止ではなく、彼らの望みの媒体でサードインパクトを行うことだった。使徒を撃退して世界を守っていると思っていたのに実は人類滅亡に加担していた、しかも子供を手駒に使って」なわけで、ヴィーレとして戦いつづけているのもそのへん忸怩たる思いがあるためかもしれない。
で、そこへ来て、14年前に時間が止まった少年が起き抜けに言うわけです。「アレカラドウナッタンデスカ?」「アヤナミハドウナッタンデスカ?」と。
想像してみる。もしかしたら破の後、ミサトさん一行はネルフに敵対してサードインパクトを止めようとしたのかもしれない。でも止まらなかった。サードインパクトの発動を止められなかったという事実はミサトさんたちに影を落としている筈。
そこに、過去の少年が過去のまま現れて、純粋な問いを投げかける。それ自体が罪の告発です。私だったらその場から逃げだすね。
特にミサトさんは作戦指揮をとって、シンジ君の保護者になって、結果といえばサードインパクトで世界崩壊ですから。私がミサトさんだったらシンジ君に正面切って相対する自信がないです。
シンジ君へのイライラが押さえきれないのもまたアレで。「きっかけ作ったのはあんたでしょ」とか「うっさい黙れ何も知らないくせに」とかいう呪いの言葉をはかないのは流石です。イライラの真の原因は罪の告発者であるシンジ君ではなく、ミサトさんが持つ罪それ自体なので。

…そして、ミサトさんはやっぱりシンジ君に優しい。
本当なら、サードインパクトのきっかけを作った人間であり、シンクロ率0%とはいえ覚醒の兆候もあり、使徒化?している可能性もあるシンジ君はすげえ危険な存在であり、そのまま棺桶に封印しとけばいい筈。でもそうはせず、ちゃんと起こして人間扱いしてる。
サードインパクトの顛末を教えるとシンジ君が潰れかねないのでそこは知らせない。他のクルーの反応を見ると箝口令を敷いている感じもする。実際カヲル君から顛末を聞かされたときシンジ君は予想通り潰れかけてたし。
シンジ君の首に爆弾を付けて起爆スイッチは自分で握ってるけど、シンジ君がさらわれる場面ではやっぱりボタンを押せない。

ミサトさんだけじゃない。赤城博士も優しい。首輪を付ける理由をきっちり説明するのは科学者なりの優しさだし、起爆ボタンを押せなかったミサトさんに対して何も非難しない。
トウジの妹も優しい。シンジ君がサードインパクトの直接原因だとしたらもっとキツい態度でもおかしくない。きっとトウジやミサトさんから、エヴァパイロットしてのシンジ君の様子を聞いてたのかもしれない。さすがに「エヴァに今後乗らないで」とは言ってましたが、この発言は厳密にはシンジ君を非難してるわけではない。

そしてアスカ。相変わらずバカシンジ呼ばわりですけど、全体通して見るといまでもシンジ君のことが気になるんだなー、と。
彼女もミサトさんと同じく、本気でシンジ君を嫌ってるわけではない。ギャーギャーうるさいのは彼女の標準動作っぽいし。マリはそのへん理解してて彼女の悪態を受け流してますし。
シンジ君が起きたときすぐに様子を見に行ってマリに茶化されたり、爆心地での戦闘だってマリがバックアップしてるんだから殺す気でやれば13号機を抹殺できたはず。だけど実際には「殴ってでもバカシンジを止めるっ」でした。ラストでもエントリープラグのハッチを開けてシンジ君を叩き起こし、そして手を引いてやる。

優しいと言えばカヲル君も優しかったけど、シンジ君に近づく手法は「弱った人間をインチキ宗教にはめる手法」そのものでした。
情報を与えず、目的を与えず、徐々にシンジ君に取り入って、彼が犯した罪を伝えてさらに弱らせ、そこにアメをぶら下げて、最後にはフォースインパクトを起こすようそそのかすことに成功する。
彼の誤算は洗脳が効きすぎていたことで、状況がおかしいことに気付いて途中で引き返そうとするもシンジ君がそれを聞き入れずに強行しちゃいました。犯した罪をなかったことにできるという甘言を弄した結果、シンジ君はそこに執着するようになってしまい、最終的にはカヲル君自身が自殺して誤ったフォースインパクトを止める。
帳尻合わせをシンジ君にさせず自分で行ったのは優しさを通り越して愛かもしれない。
このへんの、誤った道に引き入れようとするカヲル君とそれを止めようとするミサトさんやアスカという構図。新興宗教にハマった身内を足抜けさせようとする話を思い出します。
ハマった当人からすれば甘い言葉をかけてくれる勧誘者の方が優しくて、足抜けを勧めてくる家族は優しくないんですけど、誤った道に進もうとする身内を強い言葉で引き止めるのもまた優しさなんです。

…Qで、シンジ君の周りにいる人たちはそれぞれの形でシンジ君に対して優しかったけど、本人にはそれが伝わっていなかった。
カヲル君の愛は伝わったのだろうか? 伝わったかもしれないがシンジ君はそれに気付かないかもしれないし、カヲル君はもういない。
ミサトさんやアスカの優しさは伝わるだろうか? 永久に伝わらないかもしれないし、Everybody finds love in the end かもしれない。ラストシーンのアスカのように、手を引くことしかできないかもしれない。
でもたぶん、手を引くことは無意味ではない。だからあの結末にはささやかな希望を感じるのだろう。

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ああ、沖縄に行きたい…

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